岐阜市のお客様より加藤舜陶の黄灰釉 壷の買取りをさせていただきました

加藤舜陶

陶芸家で「陶芸 灰釉(かいゆう)系技法」の愛知県指定無形文化財保持者の加藤舜陶は、6月24日午後1時24分、呼吸器疾患のため愛知県瀬戸市の病院で死去した。享年88。1916(大正5)年7月13日、愛知県瀬戸市で最も古い窯業地のひとつとして知られる赤津に、製陶業を営む父・二代春逸、母・としの長男として生まれる。本名は辰(しん)。生家は祖父・初代春逸の命名により屋号を舜陶園といい、その祖父は茶陶を得意とし、父は割烹食器を主に生産していた。1933(昭和8)年、瀬戸窯業学校4年修業の後、病気のため中退し、37年頃から作陶を始めるが召集を受ける。戦後、いち早く家業を復活させるとともに、個人作家としての制作も志し、三代春逸を名乗るべきところ、生まれ年の辰年にあやかり窯名を龍窯とし、舜陶園から名をとり舜陶と号する。50年の第6回日展に「黒い壺」が初入選し、以来、日展や日展系の団体展を発表の場とする。日展では瀬戸伝統の技法である織部、志野、伊羅保、鉄釉など、年ごとに技法の異なる作品を発表して注目を集め、60年の第3回新日展では「線彩花器」(現、花器「湖上の月」)で特選・北斗賞を受賞。受賞作は当時の瀬戸で盛んに使われた石炭窯が用いられたが、その窯の燃料を家業の製品と自身の作品とで使い分け、製品には石炭を、作品には薪を用いて作陶を行う。またこの頃より、石炭窯に薪を用いた灰釉作品の制作に本格的に乗り出し、土の素材感を生かした赤褐色の器体に緑色の釉薬が流れる一群の作品を生み出す。ところがしばらくすると、公害を理由に瀬戸では石炭窯の使用ができなくなり、ガス窯による灰釉作品の制作へと移行。これが転機となり、酸化コバルトを下地に灰釉を掛けた碧彩をつくり出し、灰釉技法の幅を広げる。その後、80年代に入ると、透明感ある釉調が特徴となる瀬戸伝統の御深井釉の研究に没頭。器面に線彫りや陰刻を施して酸化コバルトを象嵌する方法や、白化粧を施した後に掻き落としにより模様を描く方法など、次々に新しい技法を取り込んで灰釉の表現の幅を広げる。82年に日展評議員となり、同年、愛知県芸術文化功労賞を受賞。87年には勲四等瑞宝章を受章する。1990(平成2)年、第12回日本新工芸展で内閣総理大臣賞、翌年、第23回日展においても灰釉花器「悠映」で内閣総理大臣賞を受賞する。94年には「陶芸 灰釉系技法」で愛知県指定無形文化財保持者に認定される。2000年、中国陶磁器をはじめ、韓国、タイ、ベトナム、イランなど、作陶の源泉として収集したアジア地域の古陶磁コレクションのすべてを愛知県陶磁資料館に寄贈。同年、「加藤舜陶古陶磁コレクション―その作品とともに」が開催される。06年には瀬戸市美術館で「加藤舜陶回顧展」が開催され、その全貌が紹介される。長年にわたり、日展や新聞社が主催する公募展の審査員を務め、また、地元の瀬戸陶芸協会会長を歴任されるなど、後輩の指導・育成にも尽力した。 

引用先
「加藤舜陶」『日本美術年鑑』平成18年版(388頁)

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